[青森県]十和田湖の放置された遊覧船4隻 青森県が行政代執行による撤去作業を開始
2026/8/29(土) 21:34
十和田湖宇樽部地区の桟橋に2015年から放置されている4隻の遊覧船。船体にはさびが目立つほか、冬の雪の重みで転覆してしまった船も。
青森県は船の所有者に撤去を求めていましたが、撤去費用などを理由に応じませんでした。そして26日、県は船の撤去に向けた行政代執行に踏み切りました。撤去にかかる費用は7億円以上。環境省の交付金を使いながら撤去を進め、その後、撤去費用は所有者に請求します。
「道が狭く大型のクレーンが入って来られないこと、遊覧船も非常に大型で転覆しているものもあることから、解体には特殊な工法が使われます」解体に当たっては、転覆している船を動かせないことから、仮設道路を作り仮の桟橋を設置。鉄の板を設置してから水を抜き、その場で解体します。湖の上に解体作業を行うドックを作る、船の解体では珍しい工法だということです。
県は、2027年度末までの作業完了を目指しています。

現場目線で見ると、「仮設道路を作って鋼矢板を打ち、水を抜いて仮設ドック化する」という工法は、土木工事として最大級に手がかかる選択肢です。当然、計画段階では他のアプローチも比較検討されたはずですが、現場の過酷な制約がそれらをことごとく潰していった背景が透けて見えます。
海での沈船撤去なら、大型の起重機船(フローティングクレーン)を横付けして一気に吊り上げるのが定石です。しかし、現場は山の上のカルデラ湖。大型の作業船を湖外から持ち込むことは不可能です。台船を現地で組み立てて小型クレーンを載せる水上解体も考えられますが、転覆船の重心が定まらない中での水上作業は、転倒や浮力喪失による作業台船の二次災害リスクを伴います。
ダイバーによる水中ガス切断や、水面に浮かべたまま少しずつ上部から切り刻む工法もあります。しかし、放置された廃船は内部に残留油やアスベスト、有害物質を抱えている懸念があります。国立公園である十和田湖の極めて高い水質基準を前に、切断片の湖底沈降や油の流出事故は許されません。
無事な船体であれば、仮設スロープを作ってチルホールや大型ウインチで陸上に引き上げる「引き揚げ工法」や、別の広い港まで曳航して解体する手もありました。しかし、1隻が転覆・沈下している時点で船体の構造強度は著しく低下しており、引っ張れば船体が破断して湖底にバラバラに散乱する危険があります。
結局のところ、大型重機の搬入不可・水上作業船の限界・環境保全という三重苦を前に、陸上化(ドライ化)して確実に足場を固めるしか選択肢が残らなかったのが実情といえます。「他に手はなかったのか」と感じるほどの大掛かりな工事ですが、安全と環境配慮を突き詰めた結果としての苦渋の力技だったと受け止めることができます。
※写真はイメージ図です。
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